令和5年1月16日に開催した養蜂技術指導講習会(オンライン)Q&A

令和5年1月16日に開催した養蜂技術指導講習会(オンライン)のQ&Aについて、以下のとおりまとめました。
いくつかのカテゴリに分けておりますので、ご興味があるカテゴリをご覧ください。

  1. ミツバチの飼育関連
  2. ミツバチヘギイタダニ防除関連
  3. ミツバチの疾病関連
  4. 衛生管理関連
  5. はちみつ関連
  6. 花粉交配(ポリネーション)関連
  7. ニホンミツバチ関連
  8. その他

 

ミツバチの飼育関連

Q1:砂糖水、人工花粉のタイミング等が詳しく知りたいです。
A:砂糖水は越冬用貯蜜のためであれば9~10月(地域によっては11月まで)に与える必要があります。濃度は濃いめ(砂糖2:お湯1)が望ましいです。建勢用の砂糖水も同様で、その地域で流蜜のある植物の開花が見られたら給餌が可能です。ただし、給餌期間が長すぎたり、時期が遅いとハチミツ生産のために行う掃除蜜の手間が大きくなります。また、ムダ巣ができるようであれば給餌は不要です。人工花粉(代用花粉、花粉パテなどを含む)は、越夏後や早春の建勢期に与えると効果を感じやすいですが、花粉以外は未消化分が多くなることもあるので、少量ずつ与えるようにした方が賢明です。
Q2:ミツバチ用栄養剤(ビーハッチャー、アピタミン、スーパービー等)の効果が出やすい使うタイミングをしりたい。
A:栄養剤の効果が出やすいということは、根本的には蜂群の栄養状態が悪いことを意味します。花粉が入りにくいタイミング、開花量が少ないタイミングなどということになりますが、栄養的ストレスによるダメージ(産卵低下や蜂児の死亡率増加)を受けてからでは回復できなくなります。周辺の資源環境に応じて早めの手当が必要です。
Q3:採蜜期に分蜂が多く、予期せぬ時に起こるので、あらかじめ察知できる方法とか、人工分蜂の仕方等、具体的に教えていただけるとありがたいです。
A:採蜜中に分蜂が起きるのは、蜂群の内検不足、貯蜜スペース不足、王台除去等の作業の不徹底が原因となる必然であって、予期せぬものではありません。スペースを充分に与えることである程度防げますし、女王蜂の交換を早春に行えば採蜜期には分蜂はまったく起きなくなります。人工分蜂は採蜜期に行えば収量低下となります。女王蜂を人工養成して、できるだけ採蜜期間前に導入することで分蜂を起こさず、また収量の低下や蜂群の縮小も回避できます。
Q4:女王蜂の交尾率をあげる方法が知りたい。
A:交尾成功率は雄の数、女王蜂の出巣タイミングなどで変わります。出巣を早めるには小さな交尾箱を用いるのがよい方法です。これとは別に、複数の優良な蜂群で多数の雄を生産しておくことも必要です。
Q5:効果的な越冬の仕方や増群について。
A:蜂群の越冬にはいくつかの観点があります。低温かつ花がないことで女王蜂が産卵を停止して育児が停まり、貯蜜の消耗が防がれ、また、ダニの増殖も停止します。この観点では代用花粉の給餌や保温などはしない方がよいことになります。一方、冬季の気温の変動によっては蜂群の貯蜜の消耗が激しくなります。このためには気温の変動を緩和する(温度変化の小さい)状況を作る必要があります。現行の巣箱は保温や外気温の変動を緩和する能力はありません。アメリカでは低温の定温倉庫内で越冬させ、育児を停めてダニの増殖を防ぐ越冬技術が開発されています。増群は、女王蜂を人工養成しておき、分割群に導入してすぐに産卵が開始できるようにするのが効果的です。分割して自然王台(変成王台を含む)を作らせる方法では、産卵停止期間が長くなり、蜂群が縮小、あるいは働き蜂の加齢が進みすぎます。

ミツバチヘギイタダニ防除関連

Q6:巣枠を利用し、雄蜂巣を除却する方法は興味深かったが、後処理の難しさも感じた。具体的な処理の方法があれば知りたい。
A:巣から離れた場所に埋却する、焼却するなど、ダニの再感染を防ぐことができるとよいでしょう。鶏小屋などに入れて飼料化することも可能です。
Q7:IPMの話題の際にイチゴのハダニの話が出ていたが、天敵であるカブリダニを利用した防除が行われていると聴く。そのような方法をヘギイタダニに活用することは難しいのか、また、ポリネーション先がカブリダニを利用していた時、蜜蜂に悪影響は特にないのか知りたい。
A:カブリダニがミツバチヘギイタダニを捕食することはないし、巣の中で接触させることはもっと難しいでしょう。カブリダニのミツバチへの影響はないことは安全性試験で確認されています。
Q8:シュガーロールのみつばちサンプリング方法について
A:日本養蜂協会のサイトより、養蜂技術指導手引書Ⅴ 養蜂における衛生管理-ダニ防除技術(再改訂版)をダウンロードしてご参照下さい。
Q9:ギ酸およびシュウ酸の使用方法や製品情報
A:国内では動物医薬品として登録された製品はなく、ダニの防除を目的として使うことはできません。

ミツバチの疾病関連

Q10:腐蛆病の予防・対策、診断法について
A:腐蛆病は、すでに病原菌がまん延しており、基本的には感染しているという理解が必要です。蜂児が、額面にならず、穴あき状態の場合には、感染した幼虫や蛹が除去されている可能性があります(アメリカ腐蛆病での蜂児除去率は10~40%にもなります)。除去率を維持するためには、強群(蜂児に対する成蜂比が大きい状態)を維持する必要があります。自発的な蜂児除去ができない場合に急速に感染が拡大して蜂群としての発症状態となります。診断は、蜂児巣板の目視が重要です。自分では原因がわからない不調の場合は早急に家畜保健衛生所にお問い合わせ下さい。抗生物質(タイラン)は幼虫の感染防止の効果がありますが、腐蛆病は再発性が高く、一時的な感染拡大の予防にしかなりません。不調な蜂群の隔離、予防的殺処分など、ある程度積極的な感染対策が必要です。

衛生管理関連

Q11:次亜塩素酸水を用いた巣板の衛生管理方法や消毒剤の使用方法、枠や巣箱、道具の消毒方法について知りたい。
A:日本養蜂協会のサイトより、養蜂技術指導手引書Ⅲ 養蜂における衛生管理-消毒技術(再改訂版)をダウンロードしてご参照下さい。

はちみつ関連

Q12:バロア症防除剤が、蜂に付着することで、採取した蜜に混入して、薬剤が検出されたり、味や人体への影響は少なからずあると、考えた方がよいでしょうか。
A:接触毒性を示す現行の2薬剤については、脂溶性ということでハチミツへの移行は限定的ですが、ろうでできた巣には付着、蓄積していきます。細かなろう片がハチミツに入りこむことで、残留量として高い値が出ることもあり得ます。味への影響についてはあまり知られていません(シュウ酸やギ酸のようなもの、あるいはチモールは味や臭いに大きな影響を及ぼします)。人体への影響は残留基準値内であれば問題はないです。

花粉交配(ポリネーション)関連

Q13-1:イチゴハウス等で受粉用にするミツバチの管理方法
Q13-2:ハウス内でのミツバチの生活環境及び健康状態の変化(野外との比較)
Q13-3:ハウス内でミツバチを長持ちさせるための方法はあるのか?
Q13-4:なぜハウス内でミツバチが大量死する現象が起きてしまうのか?
A:日本養蜂協会(みつばち協議会)のサイトより「ミツバチにうまく働いてもらうために ? ハウスでの花粉交配用ミツバチの管理マニュアル」をダウンロードしてしてご参照下さい。

ニホンミツバチ関連

Q14:アカリンダニの疫学・対策についてもご教授いただきたいです。
A:アカリンダニについては以下の論文(オープンアクセス)をご参照下さい。
前田ほか(2015)ミツバチに寄生するアカリンダニ—分類,生態から対策まで—.日本応用動物昆虫学会誌,59: 109-126.

 

Q15-1:アカリンダニ症に関しては認可されている有効な薬剤は無い現状で、有効な予防策及び発生後の有効な対策についてお願いします。
Q15-2:アカリンダニ対策として、メントールの話がたまに出ますが、法的には認可されていませんが、実際には多くの利用があるのでしょうか。
A:新興疾病という意味では、放置して強毒性のアカリンダニがミツバチとともに滅ぶのを待つのが一番よい結果をもたらすともいえます。アカリンダニは成蜂の気管内で増えるので、成蜂寿命が短い(成蜂の回転率が高い)ときはダニが増えて気管が詰まり、成蜂が死亡するよりも前に、成蜂が寿命を迎えるので増殖速度も低下します。また働き蜂全体の日齢が上昇している冬季は、本来は増殖できない状況といえます。蜂群の状態をアカリンダニの増殖に不向きな状態で維持することが予防および感染後の対策となります。
A:利用者がいることは把握していますが、多いかどうかはわかりません。
Q16:ニホンミツバチの衛生管理
A:基本的に野生生物ですから不要です。巣箱を密集させて置かないことが一番の衛生管理になります。

その他

Q17:通常だいたい地上から20~30cm程度離して設置していますが弱群や越冬中、雨天に他の虫が入り込むことがあるので確実な防除方法があったら教えていただきたいです。
A:大型の昆虫の侵入を防ぐためには、ミツバチが問題なく歩いて通過でき、換気にも影響のないできれば、線の細い金網を巣門に設置します。また蜂量に応じて巣門にサイズを変えることにも効果はありますが、どの方法でも侵入する昆虫は必ずいます。
Q18:蜂場にゴキブリが発生することがあり、誘因粘着剤を使用して対処しているがなかなか減らない。フィプロニルを有効成分とした薬剤は巣箱の周りで使用するとミツバチに影響があるのではと思い控えているが、有識者の意見を伺いたい。
A:家屋から近い場所でミツバチを飼育する場合には侵入を防ぐのは難しいでしょう。家庭用のフィプロニル製剤を巣箱の近くで使うことは、用法的にも問題があると思われます。
Q19:ニセアカシアの増殖を山林に植えられるのか?年数が経過したアカシアはバイオマスに利用する。
A:ニセアカシアは産業管理外来種の指定のため、原則的には管理の実態が表明できる場所であれば植栽は可能です。ニセアカシアの流蜜は10~15年木がピークと言われ、実際に中国では20年になる前に伐採し、萌芽更新で蜜源としての利用を維持しています。
Q20:蜜源植物にも様々な種類があるが、1つの植物からどの程度の花粉・蜜が取れるのか、それによってどの程度蜜蜂が養えるのか、あるいは生産物(種蜂や蜂蜜、蜜蝋など)が得られるのか、具体的イメージが沸きづらい。図鑑によっては、★の数や「◎、○、△」などで示すものもあるが、蜜量・花粉量など数値化できないか。例えば、「レンゲの畑10aあたりおよそ○群の飼養ができる」「カンキツ果樹園○haだと○kg程度の蜂蜜生産が期待できる」など、行政・養蜂家(特に新規)双方にとってわかりやすい。
A:数値化で収量を保証することができないため、意味の情報にはなり得ません。特定の場所で、長期的に生産されているところでの記録に基づけば、ある程度、傾向はみられ有用な情報になるかも知れませんが、それを他の場所の状況に外装することは難しいです。雨が降れば花があっても採蜜はできませんし、樹木の花の咲き方は毎年一定ではなく、柑橘もかつてより剪定に力を入れないので裏表が明確に出る産地が増えているようです。また周辺の蜂群数、他の植物の開花状況、その年の蜂群の状態、採蜜期の気温や天候、花芽形成時の降霜など要因は多様です。
Q21:本県は蜂群数が全国一となっており、蜂群急増に伴い過密が問題となっている。一方で、都市化が進んだことにより蜂場周辺に住宅地が増加し、周辺住民から糞被害の苦情が県に寄せられるケースが増えてきている。他の家畜と異なり養蜂家が取れる対策が少ないうえに、過密なため代替地の確保も困難であり対応に苦慮している。糞被害について、養蜂家が取れる対策、一般市民が取り得る対策があれば教えてほしい(移動させる、巣箱の向きを変える、白い布を張るなどの対策は既に知っているので、別の手法があれば知りたい)。
A:糞害を減らすためには蜂群数を制限する以外にはありません、車や洗濯物の糞害を減らすためにはカーポートの設置、屋根のある場所で洗濯物を干すことなどで一定の効果は見られますが、一度糞害の経験がある方は、ごく少量の糞害にも敏感なため、軽減を図っても改善と見なさず、さらなる改善を求めてくるケースが多いです。養豚や養鶏の分野でも臭気が原因で撤退、移転しているケースは多く、養蜂場の設置についても移転先の確保などを行政対応できるかどうかに依存しているといえます。
Q22:養蜂家同士の距離の配置や種類ごとの注意点を知りたい。
A:同種間での盗蜂は1km程度までは見られます。異種間でもこの距離は同等と考えられます。盗蜂を受けたニホンミツバチでは比較的大きな被害となり、蜂群の壊滅や逃去につながることが多いです。また春などにセイヨウミツバチの蜂群に盗蜂に入るニホンミツバチはウイルスなどを持ち帰る可能性はあります(外勤蜂という意味ではアカリンダニを持ち帰る可能性は極めて低い)。
Q23:農薬による被害軽減について。巣門の開閉や巣箱の移動等物理的な対策はありますが、養蜂家の負担が大きいと感じています。負担が軽い方法で被害軽減さくはないでしょうか。
A:農薬散布場所に近いところに蜂場を設置しないのが一番と思います。蜂場周辺に農地がある場合、耕作者の方から農薬散布の計画などを事前に情報収集しておくとよいでしょう。
Q24:シュガーロール法でなぜダニが落ちるのか気になります。
A:ミツバチの体表に付着しているダニの脚部に微粉末が付着することで、脱落します。微粉末の粒径や種類によって脱落率が異なりますが、粉糖が効果が大きく、また高湿条件で粉糖が利用しにくい場合はきな粉にも高い効果があることが知られています。
Q25:みつばちは進化したのか。する可能性はあるのか。
A:地球上で最も繁栄している生物は昆虫ですが、その中でも進化の頂点にある生物がミツバチです。人為的に運ばれた世界各地で野生化が可能なほど適応力が高いことがそれを証明しています。
Q26:ダニが体表についたミツバチは集蜜可能(外勤)なのか。
A:可能です。こうした蜂が他の蜂群に入ることでダニの水平感染(蜂群間感染)が成立しているといわれるので、有意な数の外勤蜂がダニをつけたまま出巣していると考えられます。
Q27:ダニにつく(天敵)ダニ?はいるのか。
A:ダニの繁殖様式からして、繁殖に影響を与えるような天敵はいないと考えられます。
Q28:北国での定飼ということもあり、スロベニアの蜂小屋、A-Z hiveを採用しています。このような飼い方をされている養蜂家が他にもいらっしゃれば教えてほしい。
A:把握しておりません。